大手事業会社出身者がDIで見つけた、
「ビジネスプロデュース」というキャリアの進化

DIビジネスプロデューサー/小倉弘晃 × MELIUS事業責任者/田中直道

このまま今の延長線で、本当に成長し続けられるのか

事業会社で成果を出しているハイパフォーマーほど、あるタイミングでそんな問いにぶつかることがあります。 経験を積めば積むほど、「そもそも、どんな事業をやるべきなのか」「市場そのものを変える側に回れないか」「もっと大きな意思決定に関わりたい」という感覚を持ち始める方も少なくありません。 今回は、キーエンスで国内営業・海外駐在を経験した後、戦略コンサルティングファームであるドリームインキュベータ(DI)へ転身し、現在はコンサルタントである「ビジネスプロデューサー」として新規事業・産業プロデュースに携わる小倉弘晃氏にインタビュー。 事業会社経験は、ビジネスプロデュースでどう価値に変わるのか。そして、「事業を伸ばす側」から「事業を創る側」へ移った時、何が変わるのか。MELIUS 田中が、そのリアルに迫りました。

Theme 1

キーエンス時代、
東南アジアで感じた「危機感」

田中

まず、小倉さんのこれまでのご経歴から教えてください。

小倉氏

新卒でキーエンスに入社し、7年間在籍しました。うち4年間は国内で検査機器の営業を担当し、3年間はマレーシアに駐在していました。 現地では、日本人駐在員も多くなかったので、現地採用メンバーと一緒に、「マレーシア市場でどう売上を伸ばしていくか」、営業戦略の立案から実行までの責任者を担っていました。

田中

キーエンスという、日本を代表する「仕組み化された強い組織」の中で、さらに海外拠点の責任者というキャリアは、多くの方が望むものだと思います。そこからなぜ、DIという全く異なる環境へ目を向けたのですか。

小倉氏

キーエンスは素晴らしい会社でしたし、学ばせてもらったことも非常に多かったです。 一方で、やはり大企業なので、役割が細分化されています。その中で、自分自身も、既に完成された製品と仕組みを用いて「10を100に伸ばす」、つまり既存事業をスケールさせる力は、かなり身についてきた感覚がありました。

転機となったのはマレーシア駐在時です。東南アジアでは若いベンチャー企業が次々と生まれ、一国の枠を超えてスタンダードを塗り替えていく光景を目の当たりにしました。 翻って日本を見たとき、これほどのダイナミズムが日本では失われているのではないかという強い危機感を覚えたんです。 自分自身も、今のままでは、日本経済を動かすような「0から1を創る力」は身につかないのではないか。そうした違和感や危機感が、転職を考えるきっかけでした。

Theme 2

「KPIが存在しない世界」で、
問いそのものを定義する

田中

「0から1を創る」ことに挑戦したいと考えた際、事業会社の新規事業部門や、他の戦略コンサルティングファームという選択肢もあったかと思います。その中でなぜDIだったのでしょうか。

小倉氏

キーエンスで学んだ「効率化」や「標準化」は、事業をスケールさせる上では最強の武器です。しかし、新規事業の現場、特にDIが得意とする、産業そのものの在り方から考え、構想し、社内外の仲間を巻き込みながら、事業を創る「産業プロデュース」のような領域には、そもそもKPIが存在しません。「何を指標にするか」という問い自体を、自分で生み出す必要があります。 DIは単なる「戦略提案」に留まらず、社会課題を起点に産業そのものを構想し、実行まで泥臭く伴走するスタイルを貫いていました。数ある選択肢の中でも、ここなら、自分が持っていない「問いを立てる力」を磨き、非連続な成長ができると感じたんです。

Theme 3

事業会社経験は、
ビジネスプロデュースでどう活きるのか

田中

一方で、事業会社出身の候補者様と話していると、「自分の経験って、コンサルタントとして通用するんだろうか」という不安を持たれる方も非常に多いです。実際、小倉さんは事業会社での経験が「武器になる」と感じた瞬間はありましたか?

小倉氏

はい、それは間違いなくあります。むしろ、事業会社を経験していること自体が、ビジネスプロデューサー(コンサルタント)としての大きな付加価値になると確信しています。 具体的には、「地に足の着いた戦略」を描ける点です。例えば、新規事業が1から10へとスケールするフェーズでは、オペレーションの構築が不可欠です。事業会社出身者であれば、「このタイミングでこれだけの人的リソースを割かなければ、現場が破綻する」といった、現場感覚に基づいたリスクヘッジや体制構築の提案ができます。これは、理屈だけでは描けない領域です。

田中

実際に現場が動くイメージを持てるかどうかは、プロジェクトの成否に直結しますよね。 今のお話って、「事業を伸ばしてきた経験」があるからこそ、「実現できる戦略」を描ける、ということなのかなと感じました。

小倉氏

そうですね。加えて、これまで培ってきた営業経験はDIでも特に活きているという感覚があります。営業って、相手の話を聞きながら、「この人が本当に困っていることは何だろう」「何を言語化できていないんだろう」ということを考え続ける仕事なんですよね。 ビジネスプロデューサーの仕事は、限られたタッチポイントの中で、クライアント自身も言語化できていない課題を深く理解し、整理していく必要があります。 実際、相手が頭の中で漠然と抱いているイメージや課題感を、こちらが高い解像度で捉え直し、言語化・構造化したうえで提示した瞬間、「そうそう、こういうことが言いたかったんだよ」と言われることって結構あるんです。そこから一気に議論が前に進み、また、信頼関係も劇的に深まる。この感覚は、営業時代に培った力がかなり活きていると思います。

Theme 4

戦略を描くだけでは終わらない。
DIの「ビジネスプロデュース」とは

田中

御社では、「コンサルティング」ではなく、「ビジネスプロデュース」という言葉を使われていますよね。 実際、何が違うのでしょうか。小倉さんが経験されたプロジェクトを通じて教えてください。

小倉氏

象徴的だったのは、金融機関の新規事業立ち上げプロジェクトです。DIのビジネスプロデュースは、単に「戦略を描いて終わり」ではありません。クライアントの先にいるエンドユーザーのもとへ訪問し、一緒に提案を行い、フィードバックを受けて事業モデルを磨き上げる。さらに、その事業を成立させるために必要なプレイヤーを巻き込み、仲間を増やしていくところまで支援する。そこまで伴走し、かなり泥臭くコミットします。

田中

つまり、構想だけではなく、「実際に産業や事業を動かせるか」まで含めて考える仕事なんですね。

小倉氏

そうですね。また、新規事業を実際に始めてみると、既存事業の運営体制では拾いきれない「こぼれ落ちる課題」が出てくることがあります。こうした場合にも、「これはスコープ外なのでやりません」ではなく、「事業を成功させるために必要なことなら何でもやる」というスタンスこそがDIの真髄です。

Theme 5

AI時代に、価値が残る
コンサルティングとは何か

田中

最近は候補者様から、「AIでコンサルティングってなくなるんじゃないですか?」という質問を受けることも増えています。この点はどう考えていますか。

小倉氏

たしかに単純なリサーチ業務みたいなものは、かなりAIに代替されていくと思っています。ただ、その中で逆に価値が上がるのは、「何を考えるべきか」「どこを見るべきか」「何が筋がいいか」を定義する力だと思っています。情報量が増えれば増えるほど、目利き力の価値は上がる。 あともう一つは、やっぱり人を巻き込んで実行していく部分ですね。新規事業って、様々なステークホルダーの利害を調整しながら進めていく必要があります。そこはAIでは代替しきれない、人間側の価値として残るんじゃないかなと思っています。

Theme 6

事業会社出身者が
最初にぶつかる「壁」

田中

立ち上がりにおいて苦労された点はありましたか。

小倉氏

「仕事の進め方」を大きく変えることに苦労しましたね。キーエンス時代は、顧客との接触時間を最大化し、社内業務は極限まで短縮することが正義でした。 一方で、DIでは社内で上司やチームメンバーと徹底的に議論し、アウトプットの質を極限まで高めるプロセスに十分に時間を割きます。最初は、「なぜここまで社内議論に時間をかけるのか」と疑問を持ったこともありました。しかし、やってみて分かったのは、社内で100%の完成度まで高めたものであっても、クライアントに100%伝わることは稀だということです。準備段階で妥協すれば、クライアントに届く価値はさらに目減りしてしまう。だからこそ、社内で徹底的に議論し、質を磨き込む必要があるんです。アウトプットの質に対する執着心や、ビジネスプロデューサーとしての動き方を身につけるには、2~3つのプロジェクトを経験する時間が必要でした。

田中

事業会社出身者の方って、「ひとりで抱えること」をオーナーシップだと思ってしまうケースも結構ありますよね。 でも実際には、周囲を巻き込みながらアウトプットを磨き込むこと自体が、重要な仕事なんですね。

小倉氏

そう思います。幸い、DIには多様なバックグラウンドを持つメンバーが集まっており、メンター制度も非常に機能しています。つまずきやすいポイントを先回りしてアドバイスしてくれる「世話焼き」な先輩たちに助けられ、試行錯誤しながら自分のスタイルを確立していきました。

最後に

Theme 7

「事業を伸ばす経験」は、
必ず価値になる

田中

お話を伺っていると、「事業会社経験を捨てる」のではなく、事業を伸ばしてきた経験があるからこそ、事業創造にリアリティを持ち込める、ということなのかなと感じました。 最後に、かつての小倉さんのように、事業会社で成果を出しつつも「その先の成長」を模索している方々へメッセージをお願いします。

小倉氏

事業会社で本気で成果を出してきた方って、絶対に何かしらの強みを持っていると思っています。 それは、DIでも必ず価値になります。また、DIには、本当に多様なバックグラウンドを持ったメンバーが集まっていて、それぞれが前職で培ってきた強みや専門性が、そのままプロジェクトの価値に変わっていく感覚があります。 もちろん、未経験の領域に飛び込む不安はあるかと思います。しかし、新規事業や産業創造という「正解のない問い」に挑む覚悟があるなら、これほど面白い環境はありません。 ぜひ、一歩踏み出してみていただけたら嬉しいです。